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第3回SS公開講座「 ヒトの寄生虫 -寄生虫撲滅の物語と現在行われている調査- 」

  • 第3回SS公開講座「 ヒトの寄生虫 -寄生虫撲滅の物語と現在行われている調査- 」
  • 第3回SS公開講座「 ヒトの寄生虫 -寄生虫撲滅の物語と現在行われている調査- 」

2月7日(土)の午後、国立科学博物館 動物研究部長の倉持 利明 先生(獣医学博士)をお迎えして、第3回SS公開講座「 ヒトの寄生虫 -寄生虫撲滅の物語と現在行われている調査- 」を開催しました。

倉持先生はまず、寄生虫とはどのような生物なのかをていねいに説明されました。そして、寄生虫といっても分類学上様々な種類があり、各々の生物群ごとに過去に何度も寄生生活への進化が生じたことをお話し下さいました。

その上で、人に寄生する寄生虫を撲滅した例として、「日本住血吸虫」という風土病について、その発症の認知から1996年に最後の「流行終息宣言」が出されるまでの壮絶な人と寄生虫との闘いの経緯を語られました。

生徒は、たった1種類の寄生虫を撲滅するだけでもどれほどの人々の努力が必要なのか、そして、衛生的な環境がいかに重要であるかを理解できたと思います。

ただ、この寄生虫を撲滅できたのは世界で唯一、日本だけであり、まだ多くの国でこの奇病に苦しんでいる人々がいることを忘れてはならないことも先生のお言葉として心に残りました。

最後に、先生は世界のグローバル化に伴い生じた新たな寄生虫被害として、南米チリにおけるヒトのサナダムシ(条虫類)被害について語られました。

元々南米には生息していないサケ科魚類が、チリに移入されたことにより生じたサナダムシ被害、つまり、寄生虫も、人への感染を仲立ちする中間宿主もすべて外来種で成立しているというのです。

かつてはあり得なかった南北半球を超えた生物分布の拡大問題と、調査すればするほど新しい謎が出てくる学問の奥深さとを教えていただき、質問にも情熱的に語っていただく先生に感謝して、公開講座は終了となりました。