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SS国内研修「森里海の連環―ブナ林とヒトの共生―研修」を行いました

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 8月19日(月)から22日(木)の4日間、青森県西津軽郡深浦町の十二湖でSS国内研修「ブナ林とヒトの共生」研修が実施され、高校2年生6名が参加しました。
 初日の午後に現地に到着し、十二湖海浜公園から海岸沿いせ海浜植物の観察を行いました。岩場や砂地に生える、普段見ているものと異なる特徴をもつ植物を観察することで、多様な環境に適応して自らの形態を変える植物の生存戦略の一端を垣間見ることができました。夜には天体観測とウミホタルの観察を予定していましたが、あいにくの曇天でウミホタルの観察のみとなりました。空き瓶の中に魚の切り身を入れたトラップを仕掛けてウミホタルを採取し、その発光のようすを観察しました。眼を海に向けると、海中でも遊泳しているウミホタルが所々で青く発光しており、砂粒ほどの大きさしかない生物の不思議な生態に見入りました。
 2日目は柳町明男先生のガイドで、植物相を中心とした研修を行いました。白神山地の有名なブナ自然林をはじめ、わたしたちが住んでいる近畿地方の森林とは異なる夏緑樹林の中を歩きながら、植物の多様性を実感しました。柳町先生の解説では「食べられる植物」が多数登場し、太古の昔から動物や人々はこの豊かな自然を利用してこの地で生活をしていたのだろうと思いを馳せることができました。まとめの講義では「昔と現在の白神山地で変わったと思うことは何ですか」という生徒の質問に、植生が変わってきて見られなくなった植物があること、ニホンジカやイノシシなど白神山地にはいなかった生物やアメリカザリガニなどの外来種も多く見られるようになり、今後生態系に影響が出るのではないかと危惧していることなどを挙げられました。
 3日目は板谷正勝先生のガイドで、動物相を中心とした研修を行いました。板谷先生はマタギ(猟師)をされていたベテランのガイドさんで、アナグマの巣穴やフンをした跡などを説明してくださいました。また、山の守り神のブナ(東北では幹が途中から3つに分かれた巨木を山の神や森の神として崇めていたそうです)にも案内していただき、その胸高周囲長を測定しました。結果は4.8mで、樹齢は300~400年を超えているのではないかと言われているそうです。普段はあまりガイドしない場所へも立ち入らせていただき、貴重な生物にも出会うことができました。まとめの講義では、マタギをされていたころに着用されていた動物の毛皮や雪ベラなどの装備品なども見せていただきました。また、近年はやはり生態系の変化にも気付かれることも多いそうで、クマゲラやヨタカもこの地域では見ることがなくなったと語られていました。漁師もされている板谷先生が最後に語られた「山は海の恋人」という言葉には、この地域のみならず、生態系を大きな視点で守っていく必要があるということを今一度改めて考えさせられました。
 4日目は帰路の途中で秋田県立博物館に立ち寄り、縄文・弥生期の白神山地周辺の状況を学びました。沿岸には対馬海流が流れていることから、秋田・青森の日本海側は比較的早い時期から弥生文化が広がっていたことが展示からわかりましたが、津軽平野を除いて、当時の大きな水田の遺跡は見つかっていないそうです。これらの事実から、白神山地の自然の豊かさを類推することができるのかも知れません。
 4日間にわたる研修で、白神山地の豊かな自然と、その豊かさを享受してきたヒトの生活の一端を垣間見ることができました。一方で、白神山地でもいたるところでナラ枯れが目立つようになり、外来種の侵入や農薬の使用などによる生態系の変化が危惧される状況も目の当たりにしたことで、変わりゆく自然とどのように共生をし、これからの未来につなげていかなければならないかを考えさせられる研修となりました。