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第1回 SS公開講座「葉を巻く虫と葉の形の不思議な関係」を行いました

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 9月24日(土)、本校卒業生である、東京大学理学系研究科助教の樋口裕美子先生をお迎えし、本校生徒と保護者の皆さんに向けて、第1回SS公開講座、「葉を巻く虫と葉の形の不思議な関係」を開催しました。

 最初に現在、樋口先生の研究の場である、東京大学大学院理学系研究科附属植物園『小石川植物園』の紹介がありました。この植物園は元々、徳川幕府の薬園で、東京都内の約16haの敷地に約4,000種の植物を栽培する近代植物学の発祥の地とされています。日本屈指の数の植物標本を収蔵する植物園でもあり、研究室では植物と昆虫の関係についての研究がされています。

 樋口先生はその研究室で、自然界で生物が周囲環境と関わって『どのように生きているか』を明らかにする『生態学』を研究されています。研究テーマは、『昆虫と葉の形の関わり』です。昔、相手の通り道にわざと落として相手に思いを伝えた巻き恋文である『落し文(オトシブミ)』のように葉を切り取って巻き恋文のようにする、『オトシブミ』という昆虫の研究をされています。講座ではオトシブミが、どのように葉の裁断位置を決定しているかや、巻き上げの方法を観察した結果と、それを元にした仮説について解説していただきました。樋口先生は、葉の形が昆虫の加工を妨げることを、実験によって初めて明らかにされています。2021年からは、オトシブミの生態をもっと知りたいと、通年飼育をしながら実験に取り組まれています。

 また、高校から今までの進路選択についてもお話しいただきました。樋口先生は高校に進級する時に理系に進むことを決心されたそうですがを選択、高校では物理と化学を選択され、高校2年生までは進路先に生物を考えておられなかったそうです。そんな中、ある日、「電車から見える植物の名前も知らない!」と思ったことがきっかけで生物学を志し、京都大学農学部に進学。そこで先輩の大半が博士課程に進学する生物系サークルに入り、周りの人達に刺激を受けたのが研究者になったきっかけだそうです。大学教員の第一の仕事は研究で、その研究とは、『自分自身の好奇心に基づいて新しい知見を自分で一から見出して発信すること』にあるとおっしゃっていました。

 講座終了後には質疑応答が行われました。保護者の方からの、「研究者として大切な資質とは何でしょうか」という質問には、「明らかにしたいことがあって、それに愛着と好奇心をもって取り組める資質は必要です」という意見をいただきました。生徒達からは解説していただいたオトシブミに関して、「葉を巻いている途中で振動が与えられると、どうなるのでしょうか」、「オトシブミはどれくらいの葉の厚さまで切断することができるのでしょうか」、「葉を落とす虫は他にもいますが、なぜ、オトシブミの研究をされたのでしょうか」などの活発な質問が投げかけられました。質疑応答の後、持ってきていただいた葉を巻いたオトシブミを生徒達は間近で興味深そうに観察し、樋口先生と交流を深めていました。