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本年度第三回SS出前講義を行いました

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 10月20日(木)、本年度の第三回SS出前講義を大教室にて行いました。今回は、大阪教育大学准教授の乾陽子先生を講師にお迎えし、『軍事防衛する植物~自然は美味しくない?』をテーマに講演していただきました。

 今回の講義は生徒達がタブレットを使い、先生からの質問に回答し、その回答がスライドに反映される形式で行われました。まず、乾先生からの、「どれくらいの植物が食べられているのか」という質問に対して、生徒達は「かなりの割合で食べられている」とタブレットを使って回答しましたが、実際には昆虫や動物などに食べられてしまう量は、そんなに多くは無いとのことです。植物は天敵が来ても逃げも隠れもできないため、トゲ・毛・表皮などの『物理的防衛』、毒・悪臭などの神経や消化に有害な物質を生産・分泌する『化学的防衛』、時期や場所をずらす『逃避的防衛』、アリのような攻撃性のある生物を誘引したりする『生物的防衛』という防衛戦略を持っていると乾先生から説明がありました。

 その中の『化学的防衛』では、カフェイン、ニコチン、コカインなど、動物の中枢神経に作用するアルカロイドのような神経毒を植物は作り出しています。また、カテキン、タンニン、イソフラボンなどのフェノール類は動物の消化不良をおこしたり、ホルモンの作用を攪乱したりします。テルペン類であるピレスロイド、メントール、リモネンなどは殺虫・殺菌作用、忌避芳香があります。このように自然の植物が危険と毒に満ちあふれているためです。あまり植物が食べられていないのは、人間がこういった植物の化学物質を、医薬品・嗜好品・サプリ・日用品・化粧品などに利用しています。

 また、人間にとって植物は食料でもあります。そこで乾先生から、「食べる植物(野菜)を君はどう選んでいるか」という質問があり、生徒達は、「無農薬のほうが身体に良いと思うので、そういったものを選んでいる」、「遺伝子組換のものは未知数なので避けている」、「生産効率を考えると農薬の使用も容認しないといけないがいい」などと、タブレットを使って回答し、スライドに表示されました。そのような生徒達の意見に答えるかたちで乾先生からは、有機栽培や遺伝子組換え作物の定義が説明されました。また、植物の毒や不味さ、可食部が少ないことが品種改良によって改善された結果、元々、自然の植物が持っていた動物に食べられないための植物の工夫が無力化され、農地とは「武装解除された美味い植物が大量に植えられている状態」ともいえると説明されました。

 もし、農薬が使われなければ、作物は自身の化学兵器を増強し、えぐみや毒が増加した結果、収穫量が減ってしまいます。農業とは自然な植物を不自然に大量に育てる営みであり、農薬とは、自力で防衛できない自然な植物を人間が防衛の手助けをする化学兵器と考えることもできます。この解説の後、乾先生からは生徒達に対して、「あなたたちは消費者(農作物を消費する人)として、何ができるだろう」という質問が投げかけられました。生徒達からは、先ほどとは違った視点の意見が多く出されました。乾先生は、「どこかのだれかが、安全で良いものを作ってくれて当然だという考えはどうなんでしょうか。これからは、想像力をはたらかせて生産者の現状を知ることが重要な時代になってくると思います。」と話されました。

 最後に、「農薬の安全基準はどのように決められているのか」、「工場で生産される野菜は農薬を減らすことができるのではないか」など、スライドに表示しきれないくらいの生徒達からの多くの質問ひとつひとつに、乾先生は、丁寧に答えてくださいました。乾先生、長時間ありがとうございました。