奈良学ゼミ「神戸大学理学部『相対論の不思議な世界』演習」
3月18日(火)の午後,3名の中高生が「奈良学ゼミ」として神戸大学理学部を訪れ,素粒子宇宙理論研究室の坂本眞人先生の授業を聴講しました。講義タイトルは,「相対論の不思議な世界」ということで,2月に高校1年生対象に行われた学外サイエンス学習と同じタイトルですが,今回は実際に筆記しながら演習も交え,より深く理解することを目的として行われました。
講義は,まず「光速度不変の原理」を理解することから始まり,相対論的な効果がどの程度の速さで顕著になるのかを概観し,光速に近くなるほど顕著に表れることを学びました。
次に,動いている電車の中央に設置された光源から光を出したとき,電車の前後の壁に光が到着する時間について考察しました。車内の観測者からは,それらの光は同時に到着するが,地上に静止している観測者から見ると同時には到着しないということが導かれ,「同時」という概念は,観測者によっては「同時ではない」という相対的なものであることに驚かされました。
さらに,講義では,光時計で時間を表す考え方を学び,それを用いて,230万光年彼方のアンドロメダ銀河へ,光速の0.99……999(9が16個)倍の速さの宇宙船で向かったときのアンドロメダ銀河への到着時間について,光速度不変の原理とピタゴラスの定理を用いて,実際に式を立てて求める演習をしました。地球の時計では到着まで約230万年かかるが,宇宙船内の時計は遅れ,宇宙船の乗組員にとってはわずか8日程度でアンドロメダ銀河に到着できるという結果が得られました。この結果は新鮮で大変興味深く感じられました。
また,その結果は,見方を変えると,光速に近い宇宙船から見たとき「長さが縮む(ローレンツ収縮)」とも解釈できるという,一歩踏み込んだ相対論の帰結にまで学びを深めることができました。そして講義は,アインシュタインの関係「エネルギー=質量×光速度の2乗」にまで深まり,エネルギーと質量の等価性についても具体例と共に学ぶことができました。
最後は,研究者にとって大切なことについてお話し下さいました。研究者にとっては,様々な現象や既知の事実に対して,「なぜ?」という不思議に思う気持ちが何よりも大切であり,理学部では法則なども導出そのものが学べる楽しさがあることをお話し下さいました。そして,まずは中学・高校での日々の学びを大切にして下さいと,激励のお言葉を頂き,今回の「奈良学ゼミ」は終了しました。