矢田の丘里山支援チーム

中学1年生 第1回環境研修を行いました

里山のある本校では、「自然と親しみながら、解決すべき環境問題にどのようにアプローチしていくかを学ぶ」、環境研修を実施しています。9月21日(土)は、中学1年生を対象に第1回の環境研修を行い、保護者の皆様にも見学していただきました。

河合校長の挨拶に続いて、SSH部長の原教諭から里山の定義と生態系についての講義があり、本日の環境研修のテーマである、里山を再生して生き物が住みやすい環境を取り戻すことについての説明がありました。

次に、卒業生で矢田の丘里山支援チームの小宮先生から、活動内容と保護に力をいれているホタルとその餌になるカワニナの生態についての講義がありました。

最後に、ビオトープ施工管理士の太田先生から「学ぼう 発見しよう 里山づくり」と題した講義のなかで、長年にわたる自然環境保全・修復の研究を踏まえながら、人と里山のかかわりや、里山に入る際の心得についてお話をしていただきました。

当日の生徒たちのミッションは、「生物のことを知ろう」「生物を守るために里山を保全しよう」「保全のためのテクニックを学ぼう」です。クラスごとに敷地内で実地研修を行いました。実習内容は、水路の流れを穏やかにするために蛇行した水の流れをつくる環境修復、棚田での生き物観察、ため池の泥除去、木の伐採などです。生徒たちは採集網で昆虫採集をしたり重い土のうを運んだりと、それぞれの作業に熱心にとりくんでいました。

見学の保護者の皆様には、生徒たちの研究で水脈を検知して掘った井戸や太陽光パネル、伐採した木材を使ったバイオマス発電の設備なども見学していただきました。里山の各所には、生徒が研究のために仕掛けたトラップや養蜂の巣箱などがあり、それらを見学しながら、生徒たちの自主的な研究を教員がサポートする、本校の教育方針についても説明させていただきました。

実習にあたっては、日本ビオトープ管理士会京奈和支部、および、日本樹木医会有志の皆様のご協力をいただきました。また、卒業生で構成される矢田の丘里山支援チームや、高校2年SS発展グループの生徒たちが中学1年生のティーチングアシスタントとして指導にあたるとともに、見学の保護者の皆様へのサポート役も行いました。

第1回奈良学塾「里山の森を育てるクラブ-入門編-」を行いました

8月3日(土)、小学生と保護者の皆さんに参加いただき、矢田の丘里山支援チームと本校主催の第1回奈良学塾「里山の森を育てるクラブ-入門編-」を行いました。講師をつとめるのはチームに所属する、大学で教鞭をとっていたり、大学や大学院で動植物の研究を続けている本校卒業生たちです。本校中学生有志もスタッフとして参加しました。
本日、最初に行ってもらうことは、本校の里山での「昆虫採集」、地面に設置してある小さな生物用の落とし穴、「ピット・フォール・トラップ」を見つけて、その中の生物の回収、木に設置してある「カメラ・トラップ」の画像データの回収です。
参加者の皆さんは里山全体を見学した後、「森の教室」「たな田」「ほだ場」「井戸」の各エリアにわかれて昆虫採集を行いました。環境が違うと生息している生き物の種類も違います。「たな田」にはシオカラトンボなどが飛び、ピット・フォール・トラップからはゴミムシを採集しました。シイタケ栽培を行っている「ほだ場」の木材のかげには森林に生息するオオゴキブリを見つけました。他にもバッタやトカゲの一種であるカナヘビなど、それぞれのエリアで様々な生物を採集することができました。里山の上のほうには、生徒が研究で考察した水脈を確認するために掘られた井戸があり、設置されたソーラーパネルの電気で水を汲み上げる仕組みになっていることも、卒業生が説明しました。
普段の昆虫採集ではトンボやカマキリなど、空を飛んでいたり植物の上にいる昆虫に目がいきがちですが、参加した小学生の皆さんは、自分たちが見つけたピット・フォール・トラップの中にいた生物を見て、地面をはって生息している昆虫に興味津々の様子でした。教室にもどってカメラ・トラップの画像データを確認すると、夜間にアライグマが動き回っている様子が記録されていました。教壇に立って説明する卒業生からは、「アライグマは一時的なブームで輸入された外来動物で、飼えなくなった人々が野に放ち、それらが野生化しています。かわいい見た目に反してたいへん狂暴なので、見つけても近づかないようにしてください。」と、注意がありました。また、本日、採集した生物に関しても、「飼うのであれば命をまっとうするまで飼ってあげてください。飼わないのであれば、違う場所ではなく、採集した同じ場所で逃がしてあげてください。」と、話がありました。
後半は、採集した生物の名前を図鑑で調べ、わからないものは卒業生や中学生のスタッフが教えて、各エリアで生息する生物の違いの報告を行いました。たいへん暑い中の開催でしたが、夏の里山を楽しみ、参加者の皆さんと本校卒業生、中学生が交流を深めることができた第1回奈良学塾になりました。

里山教室を開催

学校見学会で「里山教室」を行いました。
7月12日(日曜日)、セミも鳴きはじめ本格的な夏の到来を感じるなか、奈良学園の学校見学会で矢田の丘里山支援チームに所属する本校OB・OGたちが、来校していただいた計84名の保護者と子どもさんに「里山教室」を開きました。
学園の広大な学校林の案内のためにこの日は朝から11人の奈良学園のOB・OGたちが集まり、ルートの確認と下見および班編成と連絡事項の伝達等を行い、万全の態勢で学校林案内に臨みました。
この教室は午前と午後の2回行い、各5班を編成して、奈良学園の学校林とそこでの活動について、動植物や環境についての豆知識、奈良学園での学校生活や勉強についての説明をして、皆様からの質問も受けました。
シイタケのホダ場では、ホダ木に使われている樹木の種類や、どのようにしてシイタケを植菌するのか、なぜホダ木を使ってシイタケを作るのか、シイタケの出来たホダ木はどうなるのか、循環型の環境とは何かなどを説明させていただきました。
貯水池におけるホタルの説明でも、興味深そうに水の中を覗き込む子どもさんや保護者の皆様の姿を見て、この山や水系、そしてそれらを守るこの活動の大切さを私たち自身も再確認する良い機会となりました。
また、山の中では様々な昆虫が見られ、棚田のなかではアメンボやマツモムシ、シュレーゲルアオガエルのオタマジャクシなども見つけることができ、私達自身も非常にワクワクしながらご案内できました。
午前午後ともに非常に暑くなりましたが、そのような中で熱心に話を聞いていただいた皆様にこの場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

エンシュウムヨウラン調査を実施

矢田の丘里山支援チームと現役生徒によるエンシュウムヨウラン調査を実施しました。
昨年まで「ムヨウラン」だと思っていた学校林の腐生植物は、OBの京都大学農学研究科の末次健司先生により、奈良県初記録種の「エンシュウムヨウラン」であると同定されました。
5月9日(土曜日)、このエンシュウムヨウランの観察会と第一回総会が行われ、計14名が参加しました。
朝から雲行きが怪しく、一時は開催が危ぶまれましたが、無事時間通りに開始。
エンシュウムヨウランは地面に落ちた木の枝などと見分けるのが難しく、苦戦しましたが、本物を見つけるとやはり気分が高ぶりました。
10時過ぎに山に入りましたが気づけば2時間以上経っていて、時が経つのがあっという間に感じられました。
結果的に、100株以上のランが確認されました。絶やさずこれからも大切に守っていきたいと思います。
そして昼食後、エンシュウムヨウランを調査している現役の高1、高2生6人と顔合わせ。高校生が午前中に私たちが印をつけたランの個体調査をしてくれたので、私たちはその手伝いをしました。
これまでの環境研修でも顔を合わせたことのある生徒や「初めまして」の生徒など、様々な生徒がいましたが、みんな熱心に楽しんでやってくれました。
その後、チームの総会を開き、里山支援チームの今後について話し合いました。
先輩方からも様々な意見を頂き、とてもためになりました。まだまだ改善すべき点も多いですがより良いチームにしていきたいものです。
このように母校の素晴らしさを実感出来た、充実した良い1日となりました。

第2回環境研修(中1)でTAとして活動

2月27日(金)に、平成26年度の中学1年生第2回環境研修が実施され、私たち18名がTAとして参加しました。研修は、A組からD組まで、各クラス1時限ずつで行われました。
生徒たちは、和歌山大学システム工学部の養父志乃夫先生のお話を伺ってから、4班に分かれて、ソーラーパネルの見学とシイタケの植菌をします。私たちは各班を引率して、活動場所への誘導や、活動中の生徒たちの安全確認をしました。この研修を通して、生徒たちとたくさん交流することができました。
NGプラザ屋上にあるソーラーパネルでは、先生やソーラーパネル担当のTAが、太陽光発電で得られた電気が学校で使われるまでの仕組みや、大グラウンドのそばにある風力発電について簡単に解説しました。
生徒たちが、私たちとの話しやソーラーパネルの間近で体験したことを覚えていてくれたら嬉しいです。今回の研修を契機に、ときおりNGプラザ2階のモニターにも目を向けてほしいと思います。
もう一つの実習であるシイタケの植菌は、森の教室内のホダ場で行いました。
コナラをホダ木として、シイタケ形成菌を植え付けます。私たちは生徒に寄り添い、お気に入りのホダ木を選ぶところから手伝いをします。
植菌の後、ネーム入りタックを木に打ち込めば「マイホダ木」の完成です。シイタケはホダ木を栄養源として成長するので、シイタケが上がれば上がるほど、木は腐り、軽くなっていきます。マイホダ木を作ることで、その様子を見に生徒が森の教室に足を運ぶ機会が増えればいいなと思います。
また、今回は将来の支援チーム候補である、高校2年生のSSH系生徒も手伝いに来てくれましたので、彼らとも楽しくコミュニケーションをとることができ、私たちにとっては有意義な一日となりました。

「矢田の丘里山支援チーム」の活動について

Ⅰ チームのご紹介

約13haの校地面積を持つ奈良学園中高の環境保全活動を支援するために、卒業生により5年前に設立された、OB・OG団体です。
設立当初は、学校環境保全活動のTA(ティーチングアシスタント)として活動していました。
現在、会員数は76名となり、学校の環境保全活動を支援する目的を越えて、

① 地域の環境NPO団体と共に里地・里山の再生作業や維持・管理、古道整備への協力や樹木ラベルづくり
② 地域の小学生と保護者の方を対象とした学習会やフィールドワーク開催
③ 特徴的な活動として、大学での学びを実践する、対象地の生物多様性保全事業を実施しています。

すなわち、チームの会員が在籍する大学と大学院は31大学・研究科におよんでおり、会員とその所属研究室とが連携してこの地域の生物多様性保全にむけた研究を進めていこうという取組です。

Ⅱ 活動の様子

▲ 中学校の環境研修でのTA活動
 
▲ 高校生の田植え・稲刈り実習でのTA活動
 
 
▲ 小学生と保護者の方対象の「奈良学塾」を年2回主催しています
 
▲ 学校見学会里山教室を主催
 
▲ ニホンアカガエル産卵場づくりとエンシュウムヨウラン植生調査

Ⅲ 目標

「矢田の丘里山支援チーム」を組織することで、

① 本校に入学前の幼少期は支援チームが主催する「里山の森を育てるクラブ」に参加
② 中学・高校の多感な時期を本校の自然環境の中で過ごし、環境保全活動を進める。
③ 卒業後は支援チームの活動に参画する。

という、成長に合わせて環境保全学習を体系的に完結させる、「持続可能な循環型の人的支援システム」の構築に力を注いでいきたい。