SSHベトナム海外研修
まず、本研修を有意義なものとするように、以下の事前研修を行いました。
①SS課題研究英語プレゼンテーションの準備 学校設定科目「SS発展」において、担当理科・英語科教員による指導の下、日越大学・グエンシュ高校でのサイエンス交流におけるSS課題研究プレゼンテーションの準備を行いました。
②10月5日(土)、イオンモール大和郡山にて大野裕史先生(イオンモール株式会社)のご指導の下、AEON Long Bien Storeでの研修に先立ち、日本のイオンモールのシステムと実際の店舗配置などを見学させていただきました。
③11月12日(火)、奈良文化財研究所にて、タンロン遺跡での研修に先立ち、日本から派遣されて実際に現地での発掘調査に携わった奈良文化財研究所の脇谷先生から発掘と遺跡保存の技術についてご講義いただきました。
④11月27日(水)、日越大学の桃木至朗先生から、タンロン遺跡での研修に先立ち、タンロン遺跡を含むベトナムに置かれた 国家の歴史と、ベトナムの文化について、オンラインでご講義いただきました。
⑤12月13日(金)、ドゥンラム村での家屋調査事前研修として、谷川竜一先生(金沢大学)、冨井治弥先生(東京大学)から、家屋調査のポイントや記録の仕方などについて、オンラインでご講義いただきました。
これらを踏まえて、令和6年12月17日(火)~12月22 日(日)の5泊6日の行程でベトナムへ赴き、以下の内容で研修を行い、高校2年SS発展グループグローバルユニットの生徒14名が参加しました。現地へは本校教員のほか、東京大学大学院生の冨井治弥 先生が講師としてご同行くださいました。
<1日目>12月17 日(火)
関西国際空港を出発し、ハノイ・ノイバイ国際空港へ向かいました。
ベトナム民族学博物館研修 53の民族からなる多民族国家ベトナムを知り、多文化共生理解と「バビ農園研修」、「ドゥンラム村研修」のための事前学習を実施し、訪問するバビ農園周辺やドゥンラム村集落の建物配置の特徴と意味を学習し、本校の「環境科学実習」で学習した内容と関連づけながら、東アジア圏に残る持続可能な循環型の里山生活と自然環境の特徴について英語で説明を受けました。参加生徒は、英語が母語でない学芸員の英語による説明を受けることで、英語をツールとして用いる重要さと難しさを感じることができました。
<2日目>12月18 日(水)
ハノイ市西部バビ国立公園に隣接する広大なバビ農園で、平地から山地へ移行する地域の農業の特徴を調べました。また、農園近辺の生物相を観察し、 亜熱帯多雨林の圧倒的な生物量を確認するとともに、後に訪れる近代農法を行っている Thanh Xuan organic vegetable garden の状況と比較し、地域空間の違いを学習できるようにしました。また、身の回りの植物を漁具など に有効利用する循環型の生活の一端を体験することで、現在の自分たちの暮らしと比較をすることができました。
そして、日越大学の学部2年生「ベトナムと日本の歴史比較」受講生とサイエンス交流を行い、他国の人々から見る日本に対する学術的な見方を知ることで、科学者を目指す日本人としての立場を客観的に見つめ直しました。本校生徒は課題研究の内容を、日越大学の学生は「ベトナムの旧正月」「奈良とベトナム南部ドンナイ地域の観光比較」「ベトナムの交通の趨勢」について、お互いに英語でプレゼンテーションを行い交流しました。
<3日目>12月19日(木)
有機菜園のTHANH XUAN ORGANIC VEGETABLE GARDENにて、ベトナムの近郊農業ではどのような作物を中心に栽培・収穫されているかを調査し、実際に働いている農家の方々にインタビューをすることで、経済成長著しいベトナムにおいて、農業がどのように変遷してきたかを調べました。無農薬での栽培については、大量生産も難しく、また消費者からの理解も最初は得られなかったことなどをうかがいました。
そして、大手流通グループのイオンの現地法人であるイオンベトナムがハノイ市に最初に開店させたイオンモールLong Bienを訪ね、ベトナムと 日本の流通の違いについて説明を受け、購買データから見る両者の消費行動の違いについて議論しました。 現地の方々の購買意欲を掻き立てる色やディスプレイを知り、また、店舗内のようすを観察し、日本との違いが、現地の方々の考え方や文化にもとづくものであることを学び取りました。
さらに、タンロン遺跡及びハノイ市旧市街地に点在するさまざまな建築物を調査し、それぞれの時代における生活環境・様式に対する合理的な建築様式について、冨井先生の解説を交えながら学びました。事前学習で国立奈良文化財研究所の研究員の方から解説を受けたタンロン遺跡の保存修復技術をふまえ、日本とベトナムにおける遺跡調査の違いについて理解することができました。
<4日目>12月20日(金)
本校の姉妹校グエンシュ高校による歓迎式後、本校生徒がそれぞれの課題研究について英語でプレゼンテーションを行いました。その後、グエンシュ高校の生徒と一緒に、伝統細工である米粉を使った人形ToHe作り、英語で行われる物理の授業にも参加しました。夕方からは生徒による本格的なクリスマスの舞台劇も見学させてもらいました。校門をくぐるとバディの生徒が迎えてくれ、生徒たちもすぐに打ち解けて意気投合できました。英語の発表は研究内容がきちんと伝わるように、発音も含めてとても熱心に練習していたこともあり、ベトナムの生徒からよいフィードバックをもらうことができました。
<5日目>12月21日(土)
古都であるドゥンラム村内のフィールドワークと家屋調査、周辺の池や古井戸の水質調査を行いました。民族・文化・環境によって異なる合理的な建物の空間配置、生活様式があることを知り、持続可能な生活をするために古くから培われてきた工夫について調査しました。村民とのお話で、自分たちの価値観を大切に守り、生活の中で具現化していることを知り、グローバルマインドを育成するにあたり、大いに役立ちました。また村全体の空間配置を知り、その中に自然環境との共生のための様々な生活の知恵と工夫があることも学ぶことができました。
本研修全体を通して、参加生徒は積極的な交流姿勢を身に付け、人々と協働することで、グローバルマインドを身に付けることができたようです。さらに、コミュニケーション手段としての英語の重要性についても認識を深めることができました。